PROGRAM of BHmag2014

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『第7回ブラックホール磁気圏勉強会』研究会@熊本大学  2014.3.3--3.5

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2014/03/03(月)

時間(講演+質疑)

講演タイトル / 氏名


 プレセミナー

10:00 (90)

BHからのエネルギー抽出機構の基礎知識(院生向け) / 高橋、他

   
12:00 〜

BH磁気圏勉強会」研究会受付開始


BH時空とBHシャドー (座長:中尾)
12:30 (40+10) 相対論的平行平板流における相対論的輻射輸送 / 福江  純
13:20 (40+10) Gravastar Shadow / 坂井 伸之
14:10 (10) <休憩>
14:20 (40+10) BH-ShadowとKerrパラメータ / 高田 真聡
15:10 (40+10) カー時空中での軌道角運動量をもつ光の伝播 / 桝田 篤樹
16:00 (20) <休憩>
16:20 (20+10) ブラックホールに落下するガスのblob / 森山 小太郎
16:50 (20+10) Binary Black-Hole による重力レンズ写像 / 伊地知 翔真
17:20 <移動>
  <懇親会> 『櫻道』
   
   
2014.03.04(火)

  講演タイトル / 氏名

  BH/NSと磁気圏 (座長:小出)
09:00 (40+10) 連星中性子星(ブラックホール)合体の磁気圏 / 小嶌 康史
09:50 (40+10) 相対論磁気リコネクション研究の現状 / 銭谷 誠司
10:40 (10) <休憩>
10:50 (40+10) パルサー表面近傍での電場遮蔽機構 / 木坂 将大
11:40 (20+10) 幾何学的に薄い降着円盤が作る磁気圏構造 / 高橋 真聡
12:10 (60) <お弁当>
  高エネルギー天体現象 (座長:斉田)
13:10 (40+10) 超臨界降着からのアウトフロー形成 / 高橋 博之
14:00 (40+10) 多次元の超新星爆発および超新星残骸モデル, 重元素の起源 / 小野 勝臣
14:50 (20) <休憩>
15:10 (40+10) 強い磁場を持つ中性子星の振動と安定性の解析 / 浅井 秀貴
16:00 (40+10) 磁気流体力学方程式に対する衝撃波捕獲法の基礎と展開 / 三好 隆博
16:50 (40+10) 中性子星固有振動を使った星振学の可能性 / 李 宇珉
17:40   
   
   
2014.03.05(水)

 講演タイトル / 氏名

  BH回転エネルギー引き抜き機構 (座長:高橋)
09:00 (40+10) Wave scattering and image formation in black hole space-time /   南部 保貞
09:50 (20+10) Superradiance in external magnetic fields / 野田 宗佑
10:20 (20+10) MHD Wave Propagation in a Black Hole Magnetosphere / 伊豆丸 翔
10:50 (10) <休憩>
11:00 (40+10) Blandford-Znajek process における起電力の起源 / 當真 賢二
11:50 (20+10) Magnetic Penrose Process / 浅野 豪士
12:20 (60) <お弁当>
13:20 (40+10) ブラックホール回転エネルギーの電磁場による因果的引き抜き / 小出 眞路
14:10 (20+10) Blandford-Znajek過程:降着円盤放射への影響の観測可能性 / 眞榮田 義臣
  BH探査 (座長:南部)
14:40 (40+10) VLBIデータ較正の妥当性検証法の発明 / 三好 真
15:30 (20) <休憩>
15:50 (20+10) 鹿島ー小金井VLBI 2GHz/8GHzでのSgr A*モニター観測 / 竹川 俊也
16:20 (40+10) ブラックホール直接観測の原理、方法と問題 / 斉田 浩見
17:10 (20) <次回開催について>
   
   


Abstracts

 

01:『Wave scattering and image formation in black hole space-time』 南部 保貞

 ブラックホールによる波の散乱問題として,ブラックホールの"像"を計算する方法について考える.重力源(レンズ天体,ブラックホール)による散乱波の2次元フーリエ変換を行なうことで,重力源の波動による像を再構成することができる.Schwarzschildブラックホールに対しては,曲がった時空上での波動方程式の解を数値的に求める事で,像の計算を行った(Class. Quantum Grav. 30 (2013) 175002).
 本講演では,波の一般的な散乱理論にもとづいて,部分波に対するphase shiftを用いて像を得る方法を紹介する.また,その方法を用いてブラックホール(できればKerr)の像の構造についての解析結果を報告する予定である.
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02: 『ブラックホール直接観測の原理、方法と問題』  斉田 浩見

BHを直接観測したい。
 ここでBHの直接観測とは、相対論効果の直接検出によってBH質量と角運動量を測定することだと考える。この講演では,一つの電波望遠鏡で可能なBH直接検出の方法として,『BHの強い重力レンズ効果が作り出す時系列データからBHの質量と角運動量を測定する方法』を提案する。ここで注目するのは次の3点である:
(1) BH近くで光源が等方的に発光すると,BHの強い重力(のレンズ効果)により,ある光線は空間的に最短距離を通って(0巡光),別の光線はBHを一周巡ってから(1巡光),観測者に届く。
(2) 0巡光と1巡光の『観測者への到達時間の差』と『観測される電場の振幅の比』はBHの質量と角運動量に依存して決まる。
(3) 波動光学で知られている Gouy phase shift という(特に1巡光に生じる)波動効果によって、0巡光と1巡光の『観測される波形』に定性的な違いが現れる。
これらの情報が一つの電波望遠鏡で取得する時系列データの中に記録される。
この『時間差』,『振幅比』,『波形の違い』を時系列データから抽出し,BHの質量と角運動量を測る原理と方法を考案する。
なお,光の波形を扱うので電波観測を想定するが,原理的にはどの波長でもよい。
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03: 『 Gravastar Shadow』 坂井 伸之

 大質量星が重力崩壊するとブラックホールになると一般に考えられているが、相転移によって状態方程式が変わるという仮定の下で考えられる別の可能性がグラバスター(gravitational vacuum star)である。Mazur & Mottola (2002)による最初のモデルは、シュバルツシルト時空とドジッター時空をスティッフマターシェルで接続した静的解であり、その後様々な変形版が提案されているが、共通する主な特徴は、重力半径に近いサイズを持ち、ブラックホールと区別がつきにくいことである。今のところグラバスターの形成過程を説明する理論はないが、近い将来ブラックホール候補天体が重力半径に近い分解能で観測されることをにらみ、ブラックホールとグラバスターを観測的に区別する方法を明らかにすることは重要である。これまでに、Chirenti & Rezzolla (2007)がグラバスターの軸対称摂動を解析し、重力波観測によって区別できることを示している。本研究では、ブラックホールとグラバスターを観測的に区別する別の方法として、天体後方の光源の影に注目した電磁波観測による方法を提案する。グラバスターには地平線がないので完全な黒になる影は存在しないが、光の不安定円軌道は存在するため、光が大きく領域は存在する。したがって、後方の光源が隠されるという意味での影がリング状に現れることが予想される。数値解析によってまずこの予想を確かめ、影の断面積にも注目してブラックホールとの違いを明らかにする。
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04: 『ブラックホール回転エネルギーの電磁場による因果的引き抜き』 小出 眞路

 ブラックホールの回転エネルギーを電磁場により引き抜くさまざまな機構が提案されてきた.ブラックホールの地平面では物質,エネルギー,情報がブラックホールの外から内側に移動・伝播するだけで電磁場といえどもエネルギーはブラックホールの外から内にしか輸送されない.この因果律を満たしてブラックホールの回転エネルギーを引き抜くには『負の電磁エネルギー』をブラックホールの地平面を横切り落とし込むしかない.ここでは,この観点からブランドフォード-ナエク機構,MHDペンローズ機構,超放射などの電磁場を使ったブラックホール回転エネルギーの引き抜き機構を簡単な式を用いて整理する.
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05:『幾何学的に薄い降着円盤が作る磁気圏構造』 高橋 真聡

 ブラックホール周りでの高エネルギー天体現象を考察する際には周辺プラズマと磁場の存在が重要であると考え、“磁気圏”としての振る舞いについて考察する。ブラックホール磁気圏に関する研究のためには、プラズマの運動が磁力線を変形させようという効果と、磁場がプラズマの運動を制限しようとする効果の兼ね合い具合が重要となる。このような研究は、磁気流体近似において以前から取り扱われてきており、最近では数値シミュレーションによる解析も進んできている。しかしながら、実際に、磁気圏としてどのような磁場分布が構成され、どのように(流体的・磁気的な)エネルギーの輸送が実現するのかについては未だ不明である。本講演では、トイモデルとして、ブラックホール赤道面にリング電流の分布を考え、それが作る磁場の重ね合わせとしての「ブラックホール周りの真空磁気圏」を紹介する。このモデルをもとに、回転ブラックホールからのエネルギー抽出についても議論する。
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06: 『Magnetic Penrose Process』 浅野 豪士

 古くから超高エネルギー天体現象や宇宙ジェット形成のエネルギー源として、ブラック ホールからの回転エネルギー抽出過程が議論されてきた。その機構としては、(a)Penrose 過程、(b)Super-radiance (c)Blandford-Znajek 機構 が知られている。本講演では、ブラックホール磁 気圏における(a)ペンローズ過程について新しい視点を紹介する。
ペンローズ過程は自転するブラックホール地平面の周りに発生する負のエネルギー領域を利用 する。負のエネルギー領域に遠方より粒子を入射し分裂させ、分裂粒子の一方はブラックホール に落下し残りは遠方にはじかれるものとする。また、この領域において落下する粒子は負のエネ ルギーの軌道を取るものとする。その結果、ブラックホールは負のエネルギー粒子の降着により その回転エネルギーを失う。一方で、遠方に向かう粒子は分裂前のエネルギーに落下粒子のエネ ルギー減少分のエネルギーを上乗せして、負のエネルギー領域からエネルギーを持ち去る。全体 としてみれば、この遠方に放出される粒子がブラックホールのエネルギーを持ち去ることになる。
この過程には分裂時の相対速度が光速度の半分以上必要で、実際の天体現象には起こりにくい。 しかし、磁場の存在は厳しい条件を緩和する。講演では dipole 磁気圏において磁気的なペンロー ズ過程を適応し、興味深い天体現象の可能性を議論する。
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07:『 MHD Wave Propagation in a Black Hole Magnetosphere 』 伊豆丸 翔

 活動銀河核は非常にコンパクトな領域であるにもかかわらず、強力なエネルギーを放出している。特に、中心核からの絞られたビーム流として、宇宙ジェットと呼ばれる現象が多数観測されていて興味深い。このエネルギー源として、ブラックホールへの膠着物質によって解放された重力エネルギーや、電磁場により引き抜くことの可能なブラックホールの回転エネルギーが考えられる。本公演では、ガス円盤中の波によるエネルギー輸送について紹介する。また、このエネルギーがいかにして外向きで、しかも絞られたビーム流のエネルギーに変換され放出されうるのか考察する。
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08: 『Blandford-Znajek processにおける起電力の起源』 當真 賢二

 相対論的速度ジェットの駆動メカニズムとして、最も有力視されているものは、中心ブラックホールの回転エネルギーの電磁的抽出 (Blandford-Znajek process)である。それは、ブラックホール磁気圏が十分プラズマに満たされているが、エネルギー密度は電磁場が優勢であるという状況において、ポイ ンティングフラックスが定常的に生成される過程である。しかし、この過程において最も基本である、起電力の起源に未だ結論は出ていない。
 パルサー風は中心星の回転エネルギーの電磁的抽出であるが、その過程においては星という物質エネルギー優勢の領域が存在し、起電力は星の物質の 回転で決まる。一方でBlandford-Znajek processでは、物質のエネルギー優勢の領域は全く存在しない。これまで起電力の起源として、事象の地平線、インフローとアウトフローの間に生じる ギャップ、エルゴ領域の3つがその可能性として議論されてきた。
 本講演では、Komissarov (2004)の定式化と議論を拡張した解析的議論により、沿磁力線電場が無い場合には一般的に、起電力の起源はエルゴ領域であることを示す。エルゴ領域内 において、電場が磁場より強くなる領域が維持され、それが電流を駆動し、起電力を生じさせ、ポインティングフラックスを生成する。電流が駆動され る領域ではForce-free近似も理想MHD近似も破綻する。エルゴ領域内の赤道面を貫く磁力線について、磁力線の回転角速度の取りえる範囲 も示す。
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10: 『強い磁場を持つ中性子星の振動と安定性の解析』 浅井 秀貴

 マグネターは非常に強い磁場を持つ中性子星として知られている。近年、マグネターの候補天体として考えられているSGRで生じたgiant flareの観測データを解析することによって準周期振動(QPO)が得られており、その起源について中性子星の固有振動によるものであるという考え方が受け入れられている。これが真実ならば、極端に強い磁場を持つ天体について星震学の考え方を適用することによって、中性子星の内部の磁場構造など、内部の物理的状況を調べることができる可能性がある。そこで我々は、磁場星の振動や安定性を線形摂動解析の固有値問題を解くことにより調べた。今回はその結果や途中経過について簡単に述べる。
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12: 『BH-ShadowとKerrパラメータ』 高田 真聡

 本講演では、BH特有の現象である光の不安定円軌道がどのように観測されるかを、BH赤道面周囲に分布する光源の明るさから考える。光源とそれが放つ光の波長に関し、以下の仮定を置く。
 ・光源はdust、光学的に薄く、分布定常しているとする。
 ・波長はBHスケールに比べて十分短く幾何光学近似が有効である。
このとき、観測者の手前に設置されたスクリーン上の明るさは
ray-tracing法を使ってemissivityを積分する事により求める事ができる。これにred-shiftによる補正も加える。その結果を用いてspin-parameterについての考察も行った。
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13: 『カー時空中での軌道角運動量をもつ光の伝播』 桝田 篤樹

 軌道角運動量を持つ光とは波面が螺旋階段のように捻じれている波動のことで,近年光学などの分野では活発に研究されている電磁波である.本研究により軌道角運動量をもった光の軌道は,回転しているブラックホール周辺を伝播する場合には測地線からずれることがわかった.このずれはブラックホールの角運動量と光の角運動量の相互作用により生じる. 軌道角運動量のもった光の重力場中での運動方程式を導出し,ブラックホール の回転軸の向きと光の伝播方向の関係でどのように測地線からずれるかを紹介する.
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14: 『パルサー表面近傍での電場遮蔽機構』 木坂 将大

 パルサーが作る磁気圏では、電磁場を介して星の回転エネルギーが粒子のエネルギーに変換されている。具体的には、単極誘導によって誘起される電位差の一部を使って粒子が加速され、ガンマ線を放出する。これを起点として電磁カスケードが発展し、大量に生成された電子・陽電子によって磁気圏の大部分の加速電場が遮蔽されると考えられている。しかし、空間構造を含めた描像や粒子の運動量分布を反映すると考えられるコヒーレントな電波放射などはあまりわかっていない。
 観測から、パルサーの表面近くでは十分な粒子加速が起きていないことが明らかとなった。磁気圏の比較的外側で電磁カスケードが起こる場合、一部の粒子はパルサー表面に向かって運動する。この粒子流が、粒子加速領域の空間構造やコヒーレントな電波放射機などに重要な役割を果たしていると考えられる。そこで、パルサー表面近傍での電場遮蔽機構に対して外側からの粒子供給を考慮した調査を行った。パルサーの磁極領域近傍で電場が遮蔽できる条件、準周期的なプラズマ不安定が起こる条件について報告する。
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15: 『連星中性子星(ブラックホール)合体の磁気圏』 小嶌 康史

 連星中性子星(ブラックホール)合体過程は重力波天文学の重要なターゲットである。その合体前に磁気圏の効果で前触れがあるかもという論文があり、それに関連した話題(勉強課題・宿題)を述べる。
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16: 『Super radiance in external magnetic fields』 野田 宗佑

 Kerrブラックホールにテスト場として磁場がかかっている場合のSuper radianceについて議論する。本発表では、まずSuper radianceとエルゴ領域との関係についてのレビューをし、またスカラー場がmasslessの場合とmassiveの場合での有効ポテンシャルの違いを確認する。次に磁場としてWald解、ダイポール磁場を用いて、有効的にエルゴ領域になる領域と有効ポテンシャルの磁場依存性を見る。できれば、これらの場合にブラックホールボムのようなことが起こり得るかについても触れたい。
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17: 『超臨界降着からのアウトフロー形成』 高橋 博之

 ブラックホール候補天体からは様々な放射スペクトル/アクティビティが観測されており、これらはブラックホールへのガス降着量によってその様相が変わると考えられている。ガス降着量は通常エディントン降着率に比べて小さいが、中にはエディントン降着量を超えるような超臨界降着状態にある天体が示唆されており、さらにこれらの天体からは高速(ほぼ光速) のジェット/アウトフローが観測されている。しかしこの円盤の加速、収束機構はわかっていない。このような超臨界降着円盤では輻射圧がガス圧に比べて大きいことが期待されるため、ジェット/アウトフロー構造を調べるためには輻射と磁場両方をコンシステントに解くことが出来る輻射磁気流体計算が必須である。大須賀ら('09) や竹内ら('10) は非相対論的輻射磁気流体計算を用いて超臨界降着円盤からのアウトフロー構造を調べた。その結果ジェットは輻射によって加速され、磁場によって収束されることを示した。しかしこの計算は非相対論の枠内で行われており、放射抵抗のような(準) 相対論的効果が無視されていた。そこで我々は特殊相対論的輻射磁気流体計算を用いてジェットアウトフロー構造を調べた。その結果、高速アウトフローが輻射圧によって加速されることを明らかにした。本講演ではこのアウトフローの加速機構と構造について議論する。
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18: 『 VLBI データ較正の妥当性検証法の発明』 三好 真 

 講演者はサブミリ波の VLBI によって我々の銀河系中心ブラックホール SgrA*などの ブラックホール・降着円盤やホライズンの撮像をめざす「きゃらばん・サブミリ計画」を進めて いる。南米アンデス高地に移動型電波望遠鏡を含むネットワークを作り、1~2千 km の短基線 VLBI(230GHz 帯)を実現し、ブラックホール周辺像の正確な撮像を行うことを目的としている。
 観測装置とともに、そのデータ較正をきちんと行うことはきわめて重要である。
 しかし、一般にこれまでの VLBI データの較正・解析法にはその妥当性を検証する良い方法を 欠いている。そのため、やたら安全を見越して装置性能を犠牲にした解析で甘んじる場合や、或 いは逆に、無理な解析を行い、そのまま解析結果を信じて発表することもあり得る。VLBI デー タ較正の妥当性を客観的に示す指標を確立できると良い。そこで、VLBI データ較正妥当性の検 証手段として、較正後の visibility データの統計的性質を調べ、理論予測と矛盾がないか調べるこ とで較正の妥当性を検証することを考えている。
天体の構造を前もって知ることはできないが、観測装置の性能については様々な測定が可能で あるので、観測者は較正 visibility がどのような熱雑音を含むかは予測が出来る。未知の天体構造 に起因する visibility 成分を較正 visibility から除去し、残差 visibility が熱雑音と矛盾ないかを調 べることで、系統的な誤差を較正、除去出来ているかを判断できるはずだ。
 講演では Miyoshi 他(2011PASJ...63.1093M)の観測データとその較正 visibility などを材料と して、較正妥当性検証の試みを、visibility の位相分布、振幅分布の両面から検討し具体的に示す。
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19: 『中性子星固有振動を使った星振学の可能性』 李 宇珉

 中性子星の(固有)振動を使った星振学の可能性については以前から様々な人々によって示唆されている。LMXBで観測される準周期的振動(QPO)から中性子星の質量・半径を見積もり、それを使って中性子星状態方程式に制限をかけたり、あるいは、SGRが起こすgiant flare中に検出されたQPOを中性子星の固有振動と見なして、それを再現するように磁場の構造や状態方程式を推定したりする試みがなされている。
 最近、accreting millisecond pulsar XTE J1751-305で角自転速度\Omegaの0.5727倍の振動数をもつ
振動が報告された。ここでは、この振動が中性子星の固有振動であるとした時、どのような振動モードであれば観測された振動数を再現できるかを考察する。
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21: 『ブラックホールに落下するガスのblob​​』 森山 小太郎

 宇宙に存在する活動銀河核の中心にはブラックホールが存在すると考えられています。その周りには降着円盤が形成されており、そこで生じる理論的な放射過程が注目されています。しかし、降着円盤よりも内側の物理現象についてはいまだによくわかっておりません。
 今研究ではブラックホールにガスの塊(blob)が回転しながらブラックホールの事象の地平面に向かって落下する際にその熱放射が遠方で観測されるとき、どのような時間発展が見られるかを理論的に研究しております。また、観測者に到達した光のエネルギーフラックスの時間変動からブラックホールの角運動量を表すKerrパラメーターaの範囲を決定することを考えております。今発表ではspotの運動を1つの粒子と仮定した場合でのaの範囲決定と、spotを多粒子で構成した場合の熱放射の振る舞いを中心に発表したいと思います。
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22: 『 相対論的平行平板流における相対論的輻射輸送』 福江 純 

 ブラックホール周辺におけるプラズマ現象の見え方への入り口として、特殊相対論的 範囲で、相対論的平行平板流の相対論的輻射輸送について議論する。非相対論的輻射輸送について は、さまざまな解法やいくつかの解析解、そしてモーメント定式化などが調べられているが、(特 殊)相対論的な輻射輸送では、まだ十分な理解はない。実際、相対論的なモーメント定式化につ いては、単純な(共動系における)エディントン近似は、方程式に特異点を生じることがわかって おり、適切なクロージャー関係がわかっていない。この 10 年ほど、解析的に調べられる範囲で調 べてきたのだが、結局、当初の予想通り、相対論的な輻射輸送方程式に立ち戻ることになり、相 対論的平行平板流における相対論的な輻射輸送方程式を数値的に解いて、エディントン近似の振 る舞いなどを調べたので、その結果を報告する。
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23: 『鹿島ー小金井VLBI 2GHz/8GHzでのSgr A*モニター観測』 竹川 俊也

2012 年、銀河系中心に位置する巨大ブラックホール–Sgr A∗–に向かって落下しつつあ るガス雲 G2 の発見が報じられた (Gillessen et al. 2012)。G2 の質量は 3 地球質量程度であるが、 Sgr A∗ に質量降着することにより様々な波長域で大きな増光を引き起こすことが期待されている。 特に cm 波帯域の電波では、bow shock で加速された電子のシンクロトロン放射による大幅な増光 が期待されている (Narayan et al. 2012, Crumley & Kumar 2013)。私たちは G2 落下に伴う Sgr A∗ の電波での光度変動を捉えるために、2013 年 2 月半ばから NICT 鹿島―小金井基線 VLBI シス テムを利用して、8GHz および 2GHz での強度モニター観測を実施している。望遠鏡は情報通信研 究機構(NICT)の鹿島 11m 鏡および小金井 11m 鏡を用いており、基線長は 109km である。現在 までの総観測日数は 39 日、各日の観測時間は約 5 時間で、非常に精度のよい観測ができており数 時間スケールでの変動も検出可能て?ある。また、Sgr A∗ は 2GHz では検出されておらず、8GHz でのフラックス密度は 0.81 ± 0.07 Jy と非常に安定している。Sgr A∗ の増光をいち早く検出し、 世界中の研究機関に警報を発することもこの観測の重要な役割である。本講演ではこれまでの観 測結果および現状を報告する。
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24: 『磁気流体力学方程式に対する衝撃波捕獲法の基礎と展開』 三好 隆博

 本講演では、非相対論的な磁気流体力学(MHD)方程式に対する衝撃波捕獲法の基礎と最近の展開を紹介する。特に、講演者らの提案したHLLD近似リーマン解法[Miyoshi and Kusano, 2005]の概念を丁寧に解説すると共に、相対論化[Mignone et al., 2009]も含むHLLD近似リーマン解法の拡張性についても議論する。合わせて、MHD衝撃波捕獲法の高次精度化や多次元化に関する注意点や最近の動向をまとめて報告する。
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25: 『Binary Black-Hole による重力レンズ写像』 伊地知 翔真

 観測技術の向上によって、近い将来には直接 Black Hole 近傍の撮像が可能になるかもしれない。
本研究では、一般相対論による測地線方程式をもとに、Black Hole 近傍の光子の軌道を調べ、降着円盤画像のシミュレーションを行った。これをもとに、Binary Black Hole の可視化シミュレーションへ拡張し、重力レンズ効果によって降着円盤画像にさらに歪み・光度変化が生じることを確認した。
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29:『相対論磁気リコネクション研究の現状』 銭谷 誠司

 近年、高エネルギー天体環境でリコネクションを議論するための基礎研究として、特殊相対論効果をとり入れた磁気リコネクションの研究が進んでいる。本講演では、初期の理論予想や、運動論・流体論のシミュレーション研究を軸に、これまでの相対論リコネクション研究の進展をレビューする。
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31:『多次元の超新星爆発および超新星残骸モデル, 重元素の起源』 小野 勝臣

 近年, 重力崩壊型超新星爆発の多次元モデルの数値計算により, 様々な親星で爆発が確かめられるようになってきた. 多次元の爆発モデルの現状と問題点について簡単に紹介する. また, 超新星爆発の際に起こる元
素合成によって超新星の主なエネルギー源となる56Ni, 更には, ウランや金に代表される重元素が合成される可能性がある. 重元素の天体サイトにつていくつか理論的に候補が考えられているが, まだはっきりと分かっていない. 重元素合成の起源に関連する研究の現状を紹介する. 他方, 超新星爆発で生じた衝撃波が星の中を伝搬する過程で物質混合が起こると考えられている. 物質混合は超新星1987Aの観測から要請されたものであるが, 非球対称な超新星爆発と物質混合はその後の超新星, 超新星残骸の観測量に反映されるはずで, 重要である. 発表者らの超新星爆発時に起こる物質混合計算及び多次元の超新星残骸計算の試みを紹介する.
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34: 『Blandford-Znajek過程:降着円盤放射への影響の観測可能性』 眞榮田 義臣

 一般相対論的MHD計算を用い、ブラックホールからの電磁的エネルギー抽出過程であるBlandford-Znajek (BZ)過程の再現を行った。過去の同分野の計算では、初期に降着円盤に与える磁場形状がBZ過程に影響すること、BZ過程で抽出されたエネルギーが円盤降着で解放されるエネルギーに匹敵することが示されていた。今回、それらに整合する結果に加え、初期磁場形状と円盤進化のステージによっては相対論的ジェットの駆動よりも降着円盤へのエネルギー供給が大きくなる結果が得られた。今後BZ過程と円盤の相互作用を詳しく見て行けば、円盤放射からのブラックホールスピンの推定がより正確になる可能性がある。
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