Abstract of BHmag2016

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Abstract

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野田 宗佑(名大)

『 MHD-flow上の流体ブラックホール 』

背景時空がflatであっても、流れのある流体上の音波方程式はacoustic metricと呼ばれる擬似的なmetric上のKlein Gordon方程式の形にまとまることが知られている。またbathtub modelと呼ばれるバックグラウンド流を選ぶと、acoustic metricはKerr metricのような形をとる。この場合には音波に対するホライズンとエルゴ領域が現れ、ホーキング輻射やsuperradianceといったブラックホール物理学の計算を音波に対して行うことができる。この流体上の音波に対するブラックホール的な構造を流体ブラックホールという。我々の研究の目的は磁気流体(MHD)に対して流体ブラックホールの考え方を応用し、天体への流体の降着やJetなどの現象について調べることである。

本発表ではまず、磁場が無い場合の流体ブラックホールについてのレビューをし、次にMHDの磁気音波、アルフベン波に関するacoustic metricを定義する。最後にその応用として磁気音波やアルフベン波に対するsuperradianceとその意味について考察する。 

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黒田健太(愛教大)

『 ブラックホール磁気降着流からの高エネルギー輻射

活動銀河核(AGN)やブラックホール(BH)連星系は膨大な高エネルギー輻射を放出している。この様な輻射はBH周辺の高温ガス領域から放出されていると考えられている。本研究では、BH近傍の時空構造を観測的に理解するために、BH近くの相対論的効果が顕著となる領域について調べる。この目的のため、放射領域はBH高緯度域からのMHD降着流とする。そうすることで、物理的な高温ガス領域の解が得られる。降着流の温度分布は、相対論的ベルヌーイの式をポロイダル面内で各磁力線ごとに解き求めた。その際、磁場の各成分についてポロイダル成分は放射状、トロイダル成分はホライズンでの境界条件を満たす適切なものとした。その結果、BH近傍で数億Kのガス領域の温度分布を議論した。また、ガスの落とし方やBHスピンの与え方により特徴的なガスの温度分布解が存在することがわかった。例えば、降着率の分布の$\theta$依存性の与え方によりガスの最高温度域の緯度が異なる解が得られた。降着流の最高温度やその位置により放射スペクトルのプロファイルが異なることが予想される。

本研究で注目する輻射モデルは、BH周囲の降着円盤の黒体輻射による低エネルギー光子が降着流内で高エネルギー電子と逆コンプトン散乱されることで高エネルギーとなり観測されるとするものである。本講演では、最高温度領域からの期待されるスペクトルをxspecの\texttt{compbb}を用いてテスト計算を行った。この結果より、べきの傾きは電子温度が高いほど高エネルギーまで伸びることが確認できた。さらに、この様なガス領域からの輻射はAGNで観測されている連続成分の発生源と期待できる。

本講演では、BH周囲の相対論的な高温ガス領域の温度分布について系統的な解析結果を中心に報告する。

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政田洋平(愛教大)

『 太陽ダイナモの数値モデリング研究とそのBH降着円盤系への応用・展望 』

フレアやコロナ質量放出等の太陽活動の源は黒点である。黒点の形成機構、すなわち『太陽ダイナモ機構』は太陽物理学最大の未解決問題であり、天体乱流研究の最前線である。『激しい乱対流が支配する太陽内部でどのようにして黒点 (= 大局的磁場) が生成されるのか?』、『太陽黒点の周期的極性反転と蝶形時空間進化を特徴づける本質的物理は何か?』これらの問いに定量的に答えることが我々の研究の目的である。本講演では太陽ダイナモ研究の現状と我々の研究成果を紹介する。また、太陽内部と降着円盤の物理の共通点と違いをまとめ、太陽ダイナモの最新研究が示唆する降着円盤でのダイナモ・磁気活動について議論する。

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小出眞路(熊本大)

『 ブラックホール回転エネルギーの電磁場による因果的引抜き II 』

2年前の第7回磁気圏ブラックホール研究会において「ブラックホール回転エネルギーの電磁場による因果的引抜き」について発表を行った.このとき,電磁エネルギー密度とエネルギー流束密度の関係式を示し,それによりブラックホール地平面においては負の電磁気的エネルギーがブラックホールに輸送されるものとしてブラックホール回転エネルギーの引き抜き機構が因果律的に自然と理解できることを述べた.しかし,このときはボイヤー・リンキスト座標に限って得られた関係式を用いているため座標系に依存しない結論が得られたとまでは言えない.最近,K. Toma & F. Takahara (2016)はボイヤー・リンキスト座標およびカー・シルト座標においてフォース・フリーのプラズマが磁力線に沿ってブラックホールに連続的に入射される非定常な過程の解析的モデルを提示した.それによると,「ブラックホールから外向きのポインティング流束はプラズマと真空の間の内側に移動する境界での変位電流と``cross-field current”により引き起される」とされている.さらに,電磁エネルギーの符号は座標系に依存し,負の電磁気的エネルギーの落とし込みは本質的でないと結論している.

本講演では,カー・シルト座標における電磁エネルギー密度とエネルギー流束の関係式を示しToma & Takahara (2016)の検証を行いたい.

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三好 真(国立天文台)

身 分: スタッフ > e-mail:makoto.miyoshi@nao.ac.jp-->

『(サブミリでなくて)ミリ波VLBIによるブラックホール撮像はどれくらい可能性があるか? 』

ブラックホール周辺像は周囲を取り巻くプラズマの影響があるため、散乱をうけてばやけてしまう。この効果は電波では観測波長の自乗に依存するので波長の短いサブミリ波帯でのVLBI観測によればブラックホール周辺像は正しく撮像できる。では、一歩手前のミリ波では、どうであろうか?その観測可能性、直面する困難の解決法について述べる。

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水田 晃(理研)

『 3D-GR MHD simulation of black hole and accretion disk 』

AGNやマイクロクェーサーで見られる相対論的ジェットはブラックホールと降着円盤のシステムからなんからの物理機構によって形成される特徴的な現象である。しかし、ジェット形成の完全な理解には至っておらず相対論的ジェット形成問題は宇宙物理学での重要な問題の一つである。ジェット形成の理論的モデルには Blandford-Payne process や Blandford-Zhajek process など磁場がブラックホール近傍で重要な役割を果たしていると考えられ、その磁場は降着円盤の中で増幅されると考えられる。我々は、降着流(inflow)とジェット(outflow)を理解するため、GRMHDシミュレーションを行っている。今回は軸対称を保つ計算とそれにランダム擾乱を与え非軸対称として計算モデルに関して質量降着率や、BZ機構などの違いに関して議論する。

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根來 均(日大)

『 残されたブラックホール観測の課題 』

これまでに多くのブラックホールの観測的研究がなされてきたが、そのそれらの結果は、必ずしも降着円盤理論と一致するものではない。ショットや QPO に特徴付けられる短時間変動、状態遷移をはじめとする長時間変動、相対論を考慮したスペクトルモデル、ジェット、これらのトピックスのうちいくつかについて、観測と理論モデルの相違とその原因について議論する。

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斉田浩見(大同大)

『 BH疑似天体はあり得るか? 』

BHシャドウは、BHによる吸収断面積だと言える。その吸収断面積の輪郭は、BHの周りを無限回周回する光の軌道で与えられる。つまり、BHシャドウを決めるのはBH地平面ではなく光の不安定円軌道である。すると、星が十分コンパクトで、その外側に光の不安定円軌道が現れると、(星が放射を出さない限り)そのコンパクト星はBHと同じシャドウを生成することになる。このようなBH疑似天体が存在可能かどうかを考える。

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 南部保貞(名大)

『 SuperradianceとしてのBZ process 』

ブラックホールからエネルギーを引き抜くメカニズムとしてはBZ processが有名である.これは磁場を用いてブラックホールの回転エネルギーを遠方に伝達する方法であり,近年GRMHDを用いたシミュレーションによってこのメカニズムがどの程度有効に働いているかを検証する研究が進んでいる.本講演ではエネルギーを引き抜きの基本過程として,粒子を用いたPenrose processと波を用いたsuperradianceを復習する.そしてBZ processを復習したのちに,これがsuperradianceとして理解できることを紹介する.

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ブラックホール磁気圏研究会
@夕張 . 北海道
2016 . 03
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