宇宙を学びたい高校生諸君へ
天文の分野に進みたいと希望する高校生諸君の中には、高校のカリキュラムの
うちの「地学」と言う科目で天文を扱っているためか、「物理」や「数学」の
勉強の重要性をあまり意識していない人もいるようです。取り敢えずは「公式」
を上手に利用さえできれば、高校では良い成績が取れるでしょう。また、最近は
宇宙についての新しい発見が相次ぎ、それらに接することでワクワクする人も
少なくないと思います(僕もそうですから)。しかしながら、一歩進んで「なぜ
だろう?」「なぜ、宇宙は◯◯だろう?」と考え始めると、高校で学んだ知識
では不十分な問題も出てくることでしょう。皆さんの中には、自分で宇宙を調
べて理解しようとする人も出てくることでしょう。
私の経験から言わせてもらえば、実際の天文学・宇宙科学の研究にあたっては、
物理や数学の基礎が大切になります。「天文」の勉強をするためには、「物理」
や「数学」も勉強しなければなりません。高校の3年間と言う短い期間でたくさん
の勉強をしなければならないでしょうが、幅広く基礎的な知識も欠かせないので、
当面必要なものだけにとらわれることなく、物理や数学もしっかり学んできて
ほしいものです。
自分の研究したことを国際的な学会に発表しようと知れば、現実問題として 「英語」が(本当に!)不可欠ですし、海外の研究者と食事に行くことにでも なれば、「日本の文化」のことを訪ねられます(多くの場合そうでした)。 相手の国の文化を知らなくても(必ずしも)失礼にはなりませんが(教えて もらえば良いのだから)、日本人であるあなたが日本のことを紹介できな ければ、極めて恥ずかしいですよ。 「歴史」や「地理」、「伝統的なこと」などなど、・・・ ある程度は頑張りましょうね。
活動的銀河中心核および宇宙ジェットの物理過程を理解し、その起源を 探っています。この目的のため、活動現象の源(エネルギー源)と思われる ブラックホール周辺での天体現象について研究しています。この研究に 際しては、ブラックホールとその周りのプラズマ・電磁場を扱う事になり ますが、一般相対論的な流体力学・電磁気学・プラズマ物理学などを基礎 として考察しています。
小学校5年生の時、「天文クラブ」に入り、研究(勉強)熱心な先輩に感化
されて宇宙に興味を持つようになりました。高校になると「地学部天文班」
に所属し、流星観測や黒点観測を行いました。このころ、生物学と化学の授業
が面白かった。宇宙の勉強をしたかったのに、肝心の物理と地学(含む天文)
の授業はいまいちで、自分で勉強するしかなかったですね。しかし、物理の
非常勤の先生(元東北大教授)が、静電気の説明の際に猫の毛皮を持ってきて、
``とても嬉しそうに''棒をこすって実験された時の笑顔が今でも忘れられない
(物理を楽しんでいるという感じ)。地学(地質)の先生の授業は面白みが
無かったけれど、高校教師としての仕事の間に県内の地質を調査し、ついには
学位(論文博士)を取得される姿を見て、すごい!と見直した事も忘れられま
せん。
高校・大学では、ブルーバックスや岩波新書、日経サイエンスなどの宇宙物理
学・物理学分野の本や雑誌を読み、宇宙の事を勉強しました。内容は良くわかり
ませんでしたが、不思議がいっぱいでした。
大学一年生のとき、「宇宙のはじまりの3分間」の講義でわからないことがあり
質問したら、「これらの問題は君たちが将来に解決しなければならない
(先生にもわからない)」と言われて、いままでの勉強(知識の詰め込み)
とは違う「研究」というスタイルに何か惹かれるものを感じました。
自分にも何かできるのかも?
大学4年生のときの卒業研究ゼミナールおよび大学院での教育を経て、
あこがれであった「研究」が、日常的なスタイルへとと移行していきました。
高橋 真聡
愛知教育大学 理科教育講座 宇宙・物質科学専攻 : 教授