Concept of SgrA2012_ALMA

 銀河系中心爆発2013とALMA

 銀河系中心ブラックホール SgrA* の 2013 年事象の解明

『銀河系中心ブラックホール2013』研究会

研究会 趣 旨


現在、我々の銀河系中心 Sgr A* に存在するであろう大質量ブラック
ホ-ルに向かって、「分子ガス雲」が落下中である。このことは、近年
のゲンゼルらの近赤外観測で確認されており(Gillessen, Genzel, et al.
481, 51, 2012, Nature)ホットな話題になっている。このガス雲の総質
量は、地球質量の約3倍であり、広がりは 125AU 程もある。現時点では
約1700km/sec で SgrA* 中心に向かって接近中であり、2013 年夏に最接
近する。その折、SgrA* 中心のブラックホールから 260AU の地点を通過
する。このガスの相当分はブラックホ-ルに落下し、その結果 SgrA* は
爆発的に輝くと考えられる。最接近の後は、数十年にわたって明るく輝き
続けるという予測もある。

SgrA* ブラックホールまでの距離、およびその質量はほぼ正確に分かって
いるので、ブラックホールに降着するガス量はかなり正確に推定できる。
現在の軌道運動から、ブラックホ-ルへのガス降着の時期も推定できる。
今後、最接近に至る期間は、これから始まるであろう降着円盤の変化、
さらにフレアー現象やジェット生成など爆発的活動現象について観測する
好機である。時系列的・定量的に調査できる希有なブラックホ-ル爆発
イベントになると期待される。

 今回のガス雲落下では SgrA* が全ての波長帯で明るくなることが予想
される。つまり各種の観測装置が共同にコミット出来る希有の事件と
いうことになる。この好機に観測(スペース、地上限定せず)と理論
の両面から包括的な議論を行う機会を持つことは、極めて重要であろう。
観測サイドからは、どのような観測からどのような知見が得られるかを
理解し、最適な観測計画を立てられるように準備する。一方で、理論
サイドからは、取得可能な観測結果からどのような物理的解釈がもたら
されるかを検討しておく。

 今回の降着現象に際して、降着円盤は突発的に明るく輝くであろう。
特に降着円盤振動(QPO)、一般相対論効果を含むX線輝線を、高い精度で
検出できる可能性がある。これらにより、ブラックホールごく近傍での
一般相対論的現象(=「重力赤方偏移」や「時空の引きずり」に関与する
現象)を観測的に解明できるかもしれない。また軌道運動におけるガス雲
形状の変化や温度変化を詳細に観測できれば、銀河系中心の数百AU領域
(SgrA*外縁領域)の構造解明にもつながる。

 銀河中心での天体現象は X 線と電波でよく観測できるのだが、特に
ミリ波・サブミリ波が SgrA* 近傍構造を見通せる周波数帯であり、ALMA
による SgrA* 観測は極めて重要となる。そのための観測準備(観測立案、
役割分担、予備的観測)および相対論的考察を含む理論シミュレーション
による現象予測が不可欠であり、本研究会の主目的である。また、本研究
会では、分野横断的な新たな研究グループの創設をも目指している。

 将来的には「サブミリ波スペースVLBI」や「X 線干渉計」などの衛星
観測により、Sgr A* を始めとする銀河中心巨大ブラックホールが撮像観測
できようになると期待される。今回の研究会での議論や人的交流は、
これら次期衛星計画の準備としても大きな意義があると考える。















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