ABSTRACT of GalacticCenterBH_edu


長野ブラックホール天文教育研究会
銀中祭り [ 2014 Nov. 15 - 16 ]

長野ブラックホール天文教育研究会(銀中祭り)講演アブストラクト


初日レビュー


西山正吾(宮教大) :銀河系中心領域の近赤外線観測とガス雲

G2 に関する最新動向 銀河系中心領域の近赤外線観測の手法について紹介します。後半では、ブラックホールに落ち 込んでいるガス雲について、ガス雲説に反対の立場である UCLA のグループをメインに、赤外線観測の新しい論文を紹介します。


三好 真(国立天文台) :電波干渉計の原理、ブラックホールの VLBI 観測+銀河中心モニター

G2 のブラックホールへの接近の報を受け、日本では宇宙研の坪井を中心に数台の電波望遠鏡 を用いた VLBI 観測を開始した。SgrA*が光り出すその瞬間を捉えてようというのであるが、その近点通過予想(今年 4 月)を過ぎても SgrA*の電波強度に普段と異なる変動は現れていない。 SgrA*はまた、ブラックホールの近傍を解像できる一番の候補である。どうすればブラックホー ルの解像ができるのか述べる。


嶺重 慎(京大) :X 線観測の話題(歴史、降着モード、スペクトル特性、今後の展開)

ブラックホール天文学は X 線天文学とともに始まったといっても過言ではない(多少、過言?)。X 線天文学とともに発展してきたブラックホール理解について簡単におさらいし、今後の観測の 展望について議論する。


高橋真聡(愛教大) :ブラックホール探査に向けての理論的取り組み

ブラックホール“候補”天体は数多く発見されているが、ブラックホールに固有な一般相対論的 効果は未だ検出(証明)されていない。ブラックホール近傍に迫る観測はいくつか計画されてい るが、それらのアプローチに関わる理論的予測について整理・検討する。
(キーワード:ブラックホール影、鉄輝線、近日点移動)


初日各論


斉田浩見(大同大) :Sgr A*を巡る恒星 S2 観測を通した重力理論の制限への期待

重力が強い状況では、一般相対論が正しいかどうか(他の重力理論はダメかどうか)は未検証 である。SgrA*を周回する恒星 S2 は、近日点近傍において、観測できるコンパクト天体の中で は観測史上最も強い重力場を経験すると推定されている。そこで、S2 の観測を通して一般相対論の検証がどれだけ進められるかを考えたい。


西山正吾(宮教大) :超巨大ブラックホールを周回する星の近赤外線分光観測

銀河系の中心にある超巨大ブラックホール Sgr A*を周回する S2 とよばれる星の近赤外線分光 観測を始めました。視線速度のモニター観測を通して、ブラックホール近傍の時空情報を調べたいと考えています。研究の手法や今後の予定についてお話しします。


川島朋尚(国立天文台):ガス雲 G2 がブラックホール降着流に与える影響

3 次元 MHD シミュレーションを実施してガス雲 G2 が銀河中心のブラックホール高温降着流に与える影響を調べた。G2 の降着流への入射角度や輻射冷却の効果が質量降着率の時間進化に与 える影響について議論する。


南部保貞(名大) :干渉効果を用いたブラックホール時空の検証

ブラックホール時空における波動光学に基づいて,ブラックホール候補天体からの stochastic signal中からブラックホール時空固有の性質であるphoton sphere (unstable orbit for null rays)の情報 を引き出す方法を提案する. いくつかの典型的なブラックホール候補天体に対して,どの程度の 値が得られるかを評価し観測的検出可能性について 検討する.


・孝森洋介(和歌山高専):銀河中心 BH のスピンを over spining の可能性を含めて再検討する

我々の銀河中心にはブラックホールがあるとされており、その存在を確かめる研究が進められ ている。この発表では、銀河中心に何があるのかをブラックホールでない可能性も含めて再検討し現時点の観測からどこまで制限できるのかについて議論する。


大西浩次(長野高専):銀河系中心方向のミクロな重力レンズとマクロな重力レンズ

銀河系の中心方向にいくつかのクエーサーが存在する。 われわれ太陽系の銀河回転により、 これらのクエーサーと SgrA*との相対位置が変化する。この測定から、SgrA*までの距離測定が行われている。しかし、クエーサーの位置は、中心方向の星たちによって揺らいでいる。さらに、 これらの相対位置の移動には、銀河系中心方向のマクロな重力レンズ効果の影響が含まれている。 これらの検出から、中心方向のコラム質量が求められる。



2日目レビュー


有本淳一(洛陽工業高)・篠原秀雄(草加東高) :学習指導要領と教科書にみる銀河系


各論


篠原秀雄(草加東高) :ブラックホールを素材にした高校物理の実践例の紹介 ~NGC4258 の中心天体の質量を見積もる実習~

今回紹介する授業の実践例では,VLBI による観測で NGC4258 の中心に巨大ブラックホールが あることを示した論文[1]のデータを素材にした.高校物理では,円運動の応用として万有引力が 扱われる.生徒は,物理で学んだ知識を用いて,論文のデータを元に自ら中心天体の質量を求め た.その取り組みについて報告する.
[1] Makoto Miyoshi, et al. (1995), NATURE 373-6510,pp.127-129


大西浩次(長野高専) :銀河系中心巨大ブラックホールから天の川キャンペーンへ

私たちの銀河系の中心には巨大ブラックホールがあることが 知られている。これらの活動的な現象は、非常に興味深いが、目で(可視光線で)見る事ができないという欠点を持っている。 しかし、多くの人々の天文への関心の窓口になるに違いない。 ここでは、この銀河系中心巨大 ブラックホールの関心をどのように、どのように、多様な天体現象への興味につないで行くかを、 「天の川を見ようキャンペーン」として提案したい。


渡會健也(金沢大附属高):高校物理で天文する

高等学校の理科で天文学は地学分野に含まれますが、物理分野(力学や光波)でも天文分野の内容を扱うことはできます。講演では本校で行っている実践例を紹介します。